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2025年のTOYOTA GAZOO Racing(TGR)陣営は、前年チャンピオンの1号車au TOM’S GR Supraをはじめとする6台のGR Supra GT500でタイトル連覇に臨んだ。そして開幕戦岡山で1号車が勝つと第4戦富士のRace 2までをGR Supra勢が5連勝。第5戦SUGOから第7戦オートポリスまではサクセスウェイト(SW)の増加もあって勝利を逃すも、最終戦もてぎは1号車が完勝。2025シーズンの9レースで3勝を挙げた1号車TGR TEAM au TOM’Sと坪井は、SUPER GT史上初の3連覇、山下も連覇という偉業を達成した。
GT500クラスを9レース6勝(第4戦は2レース制)とライバルを圧倒したGR Supra勢。その速さと強さの1年を振り返ってみたい。
激戦が続いた2025シリーズを振り返る総集編「2025 シーズンプレイバック」。最終回はGT500クラスのTOYOTA GR Supra GT500の活躍を振り返る。
2025年のTOYOTA GR Supra GT500(以下GR Supra)は、開幕戦に向けて課題を抱えていた。というのも、2024シーズンはライバルを上回るパフォーマンスを発揮し、8戦6勝とクラス最多勝を挙げたものの、シーズン大詰め最終戦鈴鹿(第5戦の延期)の前戦である第8戦もてぎで37号車、14号車、19号車と3台のGR Supraがエンジントラブルを抱えた。幸いランキング1位の36号車(2025年の1号車)には問題はなく勝利したが、壊れないと思っていたパーツの破損は大きな課題となった。
2025シーズンに向けての改善では、このトラブル再発防止を期してエンジン開発が行われた。だが開幕戦に持ち込まれたエンジンは、暫定的に2024年の最終戦に準じた仕様となっていた。
このように開幕戦の岡山国際サーキットは慎重策で臨んだ。それでもGR Supraのパフォーマンスは頭抜けていた。公式予選ではNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)がポールポジションを獲得、予選2位には2年連続のGT500チャンピオンであるNo.1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)が続き、フロントローを占める。
ウェットコンディションで始まった決勝レースでは、1号車が横綱相撲の堂々たる走りでトップに立ち、乾き始めたコースを疾走して優勝を遂げた。2位は14号車、3位にNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)が続き、GR Supra勢が開幕戦から表彰台を独占した。


富士スピードウェイで開催された第2戦では、2025年シーズン向けに開発していた新しいプレチャンバーを装備した本来の2025年型エンジンが投入された。公式予選ではNo.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)がポールポジションを獲得。2位にはNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南/小高一斗)が続いた。開幕戦とは異なる2台がフロントローに並び、GR Supra全体の底上げが為されたことが証明される形となった。
長丁場の3時間レースとなった決勝でも38号車は他を寄せつけない速さを見せ、2回のピット作業で見かけ上の順位は変動したものの、事実上のトップを譲ることなく3時間を走りきり、チームとしては2019シーズン以来6年ぶりの優勝を遂げた。2位には予選7位からスタートした1号車が入賞。
開幕戦に続いて選手権ポイントを稼いで一気にシリーズポイントランキング1位を継続して優位に立った1号車。「40㎏もSWを積んでいたので、こんなレースができるとは思っていなかった。決勝では、重いのでストレートが遅くオーバーテイクが難しかったけれど、周囲のタイヤがタレてくるのを待って、1台ずつかわして順位を上げられました」と、坪井はGR Supraが高いパフォーマンスを発揮していることを裏付けるコメントを残した。


GR Supraの勢いはマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで開催された第3戦でもまったく衰えなかった。公式予選では19号車がポールポジションを獲得し、4番手にNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)がつけた。シーズン序盤にしてSWが増えた他のGR Supra勢は、スターティンググリッド中団に並んだ。
決勝レースでは、スタート直後に8番手スタートの1号車が39号車に追突されて順位を大きく落とすなど波乱もあったが、まずはポールポジションから19号車が順当にトップに立つ。しかし周回を重ねるうち19号車のペースは鈍り、8号車CIVICにトップの座を譲る。
19号車に代わって37号車がペースを上げると、ピット作業を遅らせるオーバーカット作戦に出た8号車CIVICをかわし一気に首位へ躍り出た。37号車はそのままフィニッシュして、GR Supra勢としてシーズン3台目の優勝を遂げた。



2025年のGR Supra勢がそのパフォーマンスを発揮し尽くしたのが、富士スピードウェイで開催された第4戦だった。
SUPER GTのシリーズ戦では初めてのスプリント2レース制(ドライバーは各レース1名)、SWなしとなったこの第4戦。土曜に開催されたRace 1の公式予選では19号車(阪口)がポールポジションを獲得。SWがないことで速さが戻った1号車(坪井)が予選2位、38号車(大湯)が同3位と第1戦と第2戦勝者が続いた。その日の午後に行われた決勝レースでは、1号車が逆転優勝。以下38号車、37号車(笹原)、19号車、39号車(フェネストラズ)とGR Supraが1~5フィニッシュとライバルを圧倒する。

翌日曜のRace 2の公式予選は14号車(福住)がポールポジションを獲得。1号車(山下)が2番手、38号車(石浦)が3番手、19号車(国本)が4番手、39号車(関口)が5番手と、トップ5に並ぶという猛威を示した。決勝でも14号車が優勝し、福住は現TGR TEAM ENEOS ROOKIEに移籍しての初勝利を挙げた。2~4位も1号車、38号車、39号車とトップ4を独占し、TOYOTAのホームコース富士でGR Supra勢は圧巻の成績を残した。
この結果、1号車(坪井/山下)はドライバーポイントのランキングでトップを独走する体勢を作ったばかりか、ランキングでもGR Supra勢が上位に並んだ。


シーズン折り返しの第5戦となる鈴鹿サーキットは猛暑に見舞われた。このレースでは再び通常のSWが義務づけられ、シーズン前半戦での強さで、かなりのSWを背負ったGR Supra勢の速さがいささか鈍った。
公式予選でGR Supra勢の最上位は14号車の7位。ポイントランキングでトップを独走し、その分SWが100kgとなった1号車のグリッドは13番手と沈んでしまう。
決勝レースでは7番手からスタートした14号車がアンダーカット作戦を成功させて2番手へ進出。予選2位からスタートしてトップを走る23号車Zに、14号車が迫ったが惜しくも届かず2位でレースを終えた。2025シリーズの第5戦、6レース目にしてGR Supraが初めてポールポジションと優勝を逃すレースとなった。

そして迎えた第6戦スポーツランドSUGOでは、ライバル車のSWも増え始めたこともあり、GR Supra勢も相対的にだが復調を見せる。公式予選では39号車が2位につけ、1号車が4番手。ポイントを積み増してシーズン終盤戦に向けて優位を固めたい1号車にとっては、上位入賞を狙える好ポジションである。
しかし決勝レースでは39号車が2番手ポジションを守ってトップを走る24号車Zを追いかけたのに対し、SWが重い1号車のペースは上がらず、徐々にポジションを下げることになった。アクシデントからの中断があったことで、レース終盤はセーフティカー走行からのスプリントレースさながらの展開となる。ここでSW56kgの39号車と同1kgの24号車がトップを争うも、39号車は最終ラップで抜かれ2位でフィニッシュとなった。
また1号車は9位まで後退してレースを終え、ポイント加算は2点。そして37号車が5位、14号車が7位へポジションを上げて、こちらはポイントを増やしただけでなく、結果的にチャンピオンを争う他車種ライバルのポイント獲得を阻むことになった。

第7戦オートポリスでは、今季2基目のエンジンが投入された。このエンジンは絶対的なパフォーマンスを追求ではなく、ドライバビリティの向上と、1基目のエンジンが持っていた潜在性能をいかに使いこなすかをテーマに開発された。圧倒的な速さ強さでシリーズ前半を席巻したGR Supraにとっては、リスクを避け、安定したパフォーマンスにこだわったのは、盤石の開発方針ではあった。
公式予選でフロントローに並んだのはSWが軽いZの3号車、23号車。GR Supra勢としては14号車が予選3位、38号車が4位、37号車が6位、1号車が7位、19号車が10位に並んだのは、予選結果としては及第点といえよう。
しかし決勝レースでは思いがけない事態が発生する。第7戦は前戦よりSWが半減するため各車身軽になり、決勝でポイントを追加してチャンピオン獲得へ前進するはずだったランキングトップの1号車が、コースアウトした際にエアクリーナーが砂や芝を吸ってしまい目詰まりした。これでフェイルセーフ機能が働きエンジンが正常に作動しなくなった。ここでチームは車両に無理をさせないため、リタイヤを決断したのだ。第7戦はCIVIC TYPE R-GT勢が表彰台を独占したレースになったが、ここでも4、5位に38号車と19号車が食い込んで見せた。
このレースは2025年シーズンで初めてGR Supra勢が表彰台に上がらないレースともなった。この結果、チャンピオン争いの決着はシリーズ最終戦までもつれこむこととなった。
坪井は、「途中からパワーが出なくなるような症状に見舞われてしまった。SUGO、オートポリスと、流れの良くないレースが続いているので、最終戦のもてぎではしっかりと勝ってチャンピオンを決めたいと思います」と語った。


こうして迎えた最終戦はモビリティリゾートもてぎで開催された。レースが始まる時点で、チャンピオン争いはドライバーポイントのランキング上位6チームに絞られたが、そのうち5チームは1号車を筆頭とするGR Supra勢と、圧倒的な状況であった。
このチャンピオン決定戦はSWを下ろしてのレースで、結果GR Supra勢は持てるパフォーマンスを取り戻す。公式予選では38号車がポールポジションを獲得。予選2位にはランキング首位の1号車がつけて、王座に照準を定めた。

決勝レースのスタートが切られると、オープニングラップのうちに予選2位の1号車がトップに立ち、逃げ始める。逆転王座を狙う100号車CIVICはタイヤ無交換作戦を敢行したが、対する1号車は動じない。そして逆転チャンピオンの可能性を残した他のGR Supra勢も後退。1号車は危なげなくレースを走りきって、第4戦富士のRace 1以来の3勝目を挙げた。
坪井は「2位以上でチャンピオン確定という条件だったので、無理して抜かなくてもチャンピオンが獲れる状況でしたが、やっぱり勝って終わりたいという思いがありました。(決勝前のウォームアップ走行から考えて)『(抜くなら)もう1周目しかないし、(抜く)チャンスはめちゃくちゃある』と思ってたので、そこに全集中して1周目で抜くことができました。もしかしたらどこかのチームがタイヤ無交換でくるかもとは、なんとなく想像してたので、なるべくギャップを開いておきたいなと。すごく計算どおりなレース展開でした」と、思うとおりのレースができたと語る。後半を託された山下は「トップを守らなきゃいけないなとは思っていましたが、選んだタイヤの事情で、ペース的に厳しくなってしまいました。特に、NISSAN勢(12号車と23号車)が思ったよりも速くて。状況的には(先に)行かしてもチャンピオンだとはわかってはいたのですが、(シーズン)最後だし……(勝ちたい)と思って。結構がんばって走っていたんですが、ちょっと疲れました(笑)。でも勝てて良かったです」と、厳しさがありながらもトップでゴールできたことに満足していた。


これでNo.1 au TOM’S GR Supraの坪井/山下組は、2025年のドライバー&チームのチャンピオンとなった。坪井とチームは史上初の3連覇を成し遂げ、坪井は最多に並ぶ4度目のチャンピオンを獲得。山下も連覇であり、3度目のタイトルである。TOYOTA GR Supra GT500にとっても2025シーズンを9レース中6勝と大きな結果を挙げて、GT500クラスの3連覇を達成した。
(ロニー・クインタレッリ氏の最多タイに並ぶタイトル4回は)うれしいです。この環境でレースをさせていただけることがまずありがたいことです。今の1号車は多分誰もが乗りたいと思うシートのひとつと思うので、そこに乗れているのはありがたいです。その分プレッシャーはありますが、そのなかで山下選手とともに結果を出し続けられているというのはすごくいい環境かなと思います。
今年の流れとしては(第4戦富士の)スプリントレースがありましたが、(サクセスウェイトが)ノーウェイトでレースができたことは大きかったです。開幕戦と最終戦と(第4戦)富士スプリントと、そこで大量得点を獲ることがチャンピオンに繋がったと思います。印象に残ったレースとしては……やっぱりノーウェイトのレース、開幕戦と最終戦です。(ライバルと)同条件でレースをして勝つことなので、そのふたつを今年も獲れたのは、すごく大きいと思います。
1号車のチームは、坪井選手が今回で(タイトル獲得)4回目、自分が3回目、(チームは)3連覇で……今、これだけ接戦のGT500クラスでちょっと抜けた結果を出し続けているチームに、自分が居させてもらっていることをまず感謝したいです。あと今年も完璧なシーズンではなかったんですが、チーム全員が常に100%以上のパフォーマンスを出せている印象があって、苦しいときもミスを最小限にしてきたと思うし、できる限りのことをしてきたと思うので、全員の力で獲ったチャンピオンだなと改めて思いました。
今季印象に残るレースは、今日のもてぎだと思います。伊藤監督も語っていますが、自分たちの原因ではないですが、オートポリス(第7戦)とSUGO(第6戦)で大きくポイントを落として、悪い流れになりそうだったところを、このもてぎでは予選も決勝もいつも通りの形に戻すことができたので、これが良かったと思います。
“この体制だったら(タイトルを)獲れるだろう”とシーズン前から多くの方に言われましたが、その分プレッシャーもありました。それだけに3連覇が獲れて正直ホッとしています。今年はエンジニアが変わるなか、優勝もしてきましたし、毎戦毎戦コツコツとポイントを獲りながらきました。すべてのレースで完璧ではないですが、常に反省点がある状態で次のレースに挑むというような形でした。結果として最後にこういう形(優勝)で終われて本当に良かったなと思っています。ドライバーふたりが最後まで素晴らしい走りをしてタイトルに導いてくれたことに感謝しています。
今年を振り返ると、やはりエンジニアが変わったことが本当に大きくて…。今まで普通にできていたことが、なかなかうまくできないという(エンジニア)本人の歯がゆさもあったでしょう。我々としてもTOM’S全員、ドライバーも含めてできる限りサポートし合って、自分たちでできることを一生懸命やって、スムーズにいかないときもあったのですが、それをみんなの力で乗り切った、乗り切れた、というシーズンでした。あと(リタイヤした第7戦)オートポリスのレースが非常に心残りというか…。トラブルは仕方ないんですが、レース前のタイヤ選択や戦略面で、事細かくすごく話し合ってすごく自信のあるレースでしたが、(決勝が)始まってみたらなかなか歯車がうまく回らない、噛み合わないというレースになってしまったのが、嫌なほうで思い出に残るレースかなと思います。
※チャンピオン会見の全文はこちらをお読みください。
「2025シリーズ・チャンピオン会見」

※【2025 シーズンプレイバック】は今回で最終回です。2026シーズンの熱戦もご期待ください!