SUPER GT その24年間の歴史 ~時代に即したレースを提供~
2017年も熱戦が続くAUTOBACS SUPER GTシリーズ。いよいよ夏休みに突入し、「サーキットに観戦に行こう!」と観戦計画を練っている方もいらっしゃると思います。そこでSUPER GTの基礎中の基礎を改めてご紹介します。
第7回のテーマは「SUPER GT その24年間の歴史」です。
◇ ◇ ◇
1994年5月に、その前身である全日本GT選手権(JGTC)の初戦が富士スピードウェイで開催されてから24年。
SUPER GTは日本のモータースポーツにおいて、常に中心的な存在であり続けています。
人気のひとつの指数である観客来場者数においては、2016年シーズンは7大会(オートポリス大会中止のため7大会8戦)を行い、年間観客総動員は376,197人、各大会の平均総員数は53,742人(予選日、決勝日合わせて)という実績を残しました。
これは国内のシリーズ戦では最大で、抜き出た実績であり、他の国内プロスポーツ大会と比べても遜色のないものとなっています。
この国内最大の人気を得ているSUPER GTがどのように誕生し、どんな発展を遂げてきたのかを振り返ってみましょう。
先にご紹介したとおり、SUPER GTの前身である全日本GT選手権(JGTC)は、1994年5月1日に富士スピードウェイで1年目のシリーズ開幕戦が行われました。これがSUPER GTの最初のレースとなります(1993年にも全日本GT選手権が3戦行われていますが、他のカテゴリーとの混走で行われ、GTクラスはわずか1、2台の参戦しかなく、本当の意味でのシリーズとは言えませんでした)。
この前年にグループCカーによる耐久レースシリーズの全日本スポーツプロトタイプカー選手権(JSPC)が、人気がありながらも終焉を迎えました。同様にグループA車両による全日本ツーリングカー選手権(JTC)も1993年に同様に終了。このようなこともあって、国内のレース関係者からプロフェッショナルなレース大会のあり方などを問い直す機運が上がったのです。
そして誕生したのがGTアソシエション(現在の株式会社GTアソシエション)であり、この組織が1994年の第1戦からJGTCの運営を始めたのです。したがって、SUPER GTの出発点は1994年になるわけです。
1994年の開幕戦富士は、GT1クラスが14台、GT2クラスが4台の全18台が参戦しました。GT1クラスは現在のGT500クラス、GT2クラスは現在のGT300クラスで、1995年まで、この名称を使用していました。また、当時はドライバー1名で1レースを走りきることもできました(1995年まで)。そしてレース順位によるウェイトハンディ制度も、この初年度から実施され、時代に即した改定を行いながら現在まで続いています。
当時のGT1クラスの主力車種はグループAをベースにしたスカイラインGT-R(R32)や、ランボルギーニ・カウンタック、フェラーリF40などのスーパーカーと呼ばれた車両が中心でした。また、グループCのポルシェ962Cや、ラリーカーのランチア037なども参戦して話題を呼びました。GT2クラスはポルシェ991のカップカーとJSSと呼ばれる市販スポーツカーを改造した車両が中心でした。1994年の最後2戦には、TRD(トヨタのレーシングカー開発部門)が手掛けたスープラが参戦。ここから、トヨタ(現在はレクサス)と日産の戦いが始まったのです。
JGTCが始まって3年目。1996年にはレース規定のかなり重要な面が変更されました。まずドライバーが2名制になったこと。そして、クラス名が現在と同じGT500クラスとGT300クラスになりました。この名称は当時のクラス車両の想定馬力の数字を表し、観客に分かりやすいレースを目指すGTAの表れでもありました。
この1996年には「オールスター戦」というエキシビションレースが兵庫県のセントラルサーキットで初開催されました。参戦チームをファンの人気投票で選んだり、レース以外のドライバーたちとふれ合う機会の多いアトラクションを増やすなど、シリーズ戦とはひと味違う、観客への感謝を込めた大会でした。またオールスター戦には、新しい開催地のテストケースという側面もあり、その後にはツインリンクもてぎ(1997年)、TIサーキット英田(1998年、現在の岡山国際サーキット)、オートポリス(1999年)がオールスター戦を行い、その後シリーズ戦に組み込まれています。
また、2000年以降は海外開催も行い、その後の国際シリーズ化へのステップも踏んでいます。最初の海外戦は、2000年のマレーシア・セパンサーキットでの特別戦でした。このマレーシア大会は2年の特別戦開催を経て、2002年に初の海外シリーズ公式戦となり、2013年まで開催されました。また、2004年にはアメリカのカリフォルニアスピードウェイでもオールスター戦が開催されています。
マシンでは、1997年第2戦からHondaの支援によるNSXがGT500クラスに参戦を開始(1996年参戦のNSXは英国で造られたル・マン24時間レース用の車両ベース)。これでGT500クラスは、スープラ、NSX、GT-Rという国内3メーカーを中心とした(マクラーレンF1GTRやランボルギーニといった外国車も参戦)戦いの場となりました。なお日産は、スカイラインGT-R(R34)が生産終了となったことから、2004年からフェアレディZに車両を変更しました。
GT300クラスでは、当時の改造範囲の広さを活かして、トヨタのMR2やセリカ、MR-S、日産シルビア、スバルインプレッサ、マツダRX-7と言った国産スポーツカーが活躍。そこに、ポルシェ911GT3R、フェラーリF430、ランボルギーニ・ムルシェラゴなどの欧州スーパーカー、そしてガライヤやビーマックと言った少数生産車と、とてもバラエティに富んだクラスとなりました。
1998年には、AUTOBACS(株式会社オートバックスゼブン)が全日本GT選手権のシリーズ冠スポンサーとなりました。以後、AUTOBACSは現在まで19年に渡りSUPER GT/JGTCを通じて日本のモータースポーツを支援し続ける重要なパートナーとなっています。
2002年以降、海外戦をシリーズに組み込んできた全日本GT選手権は、2005年からSUPER GTと名称を改め、正式に複数国で開催するインターナショナルシリーズとなりました。
このSUPER GTになってからは車両面で著しい変革がありました。特にGT500クラスでは、2006年にカーボンモノコックが使用できるようになり、これに併せてトヨタ/レクサスはSC430を導入。2008年には日産がフラッグシップカー・日産GT-Rの発売に伴い、GT-RをSUPER GTに復活させました。またHondaもNSXの生産終了から2010年にHSV-010 GTを開発。このHSV-010 GTはHondaにとって初のフロントエンジン/リアドライブのレーシングカーとしても注目を浴びました。
さらに2014年には、ドイツのDTM(ドイツツーリングカー選手権)と車両規定の共通化を実現しました。高性能ながら環境に配慮し、安全性を高めた新たなGT500マシンが2014年シーズンから登場。この時、レクサスはRC Fに、HondaはNSX CONCEPT-GTに車両を変更しました。
この車両規定の基本は今年も変わりませんが、空力性能の制限などを行い、さらなる安全性と競技性の向上がはかられました。そして、今季からレクサスは新たなスポーツクーペ・LC500をベースとしたマシンで参戦。また、Hondaも新型NSXの市販に伴い、GT500マシンの名称をNSX-GTに改めました。
また、GT300クラスでは、2011年にBMW Z4がタイトルを獲得したことから、FIA GT3車両の評価が高まり、欧州のFIA GT3車両と国産のJAF-GT300車両という構図に変わっていきます。さらにFIA GT3車両に日産GT-RやレクサスRC Fなどの国産車も登場。また、車造りにこだわるレーシングガレージのために、2015年にマザーシャシーが導入されました。諸外国のGTレースがFIA GT3車両一辺倒になる中、SUPER GTのGT300クラスは“ものづくりの日本”という伝統を活かした独自のGTレースを確立しています。
大会運営の面では、伝統ある「JAFグランプリ」の名称を冠した、富士スプリントカップを2010年から2013年まで開催。SUPER GTのみならず、国内最高峰のフォーミュラも同時開催されるという画期的な大会となりました。
また、2014年からはマレーシア大会に代わり、タイのブリーラムにあるチャン・インターナショナル・サーキットで海外公式戦が行われるようになりました。
このようにSUPER GTは全日本GT選手権時代から、常に革新を忘れず、時代に即したレース運営を行ってきました。また、そこにはプロフェッショナルのスポーツイベントとして観客・ファンの存在を忘れず、高いエンターテイメント性も確保しています。
毎戦のレース、年間のチャンピオンシップのみならず、今後のSUPER GTのチャレンジにも注目して頂きたいと思います。
Year | Driver Champion | Team Champion |
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GT500
|
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1994 | 影山正彦 (カルソニックスカイライン) | HOSHINO RACING |
1995 | 影山正彦 (カルソニックスカイライン) | TEAM TAISAN |
1996 | デビッド・ブラバム/ジョン・ニールセン (ラーク・マクラーレンF1GTR) | チーム ラーク・マクラーレンGTR |
1997 | ミハエル・クルム/ペドロ・デ・ラ・ロサ (カストロール・トムス・スープラ) | TOYOTA Castrol TEAM |
1998 | エリック・コマス/影山正美 (ペンズオイル・ニスモGT-R) | NISMO |
1999 | エリック・コマス (ペンズオイル・ニスモGT-R) | TOYOTA Castorl TEAM TOM'S |
2000 | 道上龍 (Castrol無限NSX) | 童夢×無限プロジェクト |
2001 | 竹内浩典/立川祐路 (auセルモスープラ) | NISMO |
2002 | 脇阪寿一/飯田章 (エッソウルトラフロースープラ) | 童夢×無限プロジェクト |
2003 | 本山哲/ミハエル・クルム (ザナヴィ ニスモ GT-R) | NISMO |
2004 | 本山哲/リチャード・ライアン (ザナヴィ ニスモ Z) | NISMO |
2005 | 立川祐路/高木虎之介 (ZENTセルモスープラ) | NISMO |
2006 | 脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー (OPEN INTERFACE TOM'S SC430) | TOYOTA TEAM TOM'S |
2007 | 伊藤大輔/ラルフ・ファーマン (ARTA NSX) | ARTA |
2008 | 本山哲/ブノワ・トレルイエ (XANAVI NISMO GT-R) | TOYOTA TEAM TOM'S |
2009 | 脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー (PETRONAS TOM'S SC430) | TOYOTA TEAM TOM'S |
2010 | 小暮卓史/ロイック・デュバル (ウイダー HSV-010) | ウイダーホンダレーシング |
2011 | 柳田真孝/ロニー・クインタレッリ (S Road MOLA GT-R) | MOLA |
2012 | 柳田真孝/ロニー・クインタレッリ (S Road REITO MOLA GT-R) | MOLA |
2013 | 立川祐路/平手晃平 (ZENT CERUMO SC430) | LEXUS TEAM ZENT CERUMO |
2014 | 松田次生/ロニー・クインタレッリ (MOTUL AUTECH GT-R) | NISMO |
2015 | 松田次生/ロニー・クインタレッリ (MOTUL AUTECH GT-R) | NISMO |
2016 | ヘイキ・コバライネン/平手晃平 (DENSO KOBELCO SARD RC F) | LEXUS TEAM SARD |
GT300
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1994 | 小幡 栄 (KORG KEGANIポルシェ) | KEGANI RACING |
1995 | 石橋義三/星野 薫 (欧州車販売の外国屋アドバン) | 石橋義三 |
1996 | 鈴木恵一/新田守男 (タイサンスターカードRSR) | TEAM TAISAN |
1997 | 福山英朗/織戸 学 (RS☆Rシルビア) | RS-Rレーシングチーム with BANDOH |
1998 | 鈴木恵一/舘 信吾 (つちやMR2) | TEAM TAISAN Jr. with つちや |
1999 | 新田守男 (モモコルセ・アペックスMR2) | MOMOCORSE Racing Team. with Tsuchiya |
2000 | 福山英朗 (シェルタイサンアドバンGT3R) | TEAM TAISAN Jr. with ADVAN |
2001 | 大八木信行/青木孝行 (ダイシンADVANシルビア) | TEAM TAISAN ADVAN |
2002 | 新田守男/高木真一 (ARTAアペックスMR-S) | TEAM TAISAN ADVAN |
2003 | 木下みつひろ/柳田真孝 (ハセミスポーツ・エンドレス・Z) | TEAM TAISAN ADVAN |
2004 | 山野哲也/八木宏之 (M-TEC NSX) | M-TEC CO.LTD. |
2005 | 佐々木孝太/山野哲也 (RECKLESS MR-S) | TEAM RECKLESS |
2006 | 山野哲也/井入宏之 (雨宮アスパラドリンクRX7) | RE雨宮レーシング |
2007 | 大嶋和也/石浦宏明 (TOY STORY Racing apr MR-S) | Cars Tokai Dream28 |
2008 | 星野一樹/安田裕信 (MOLAレオパレスZ) | MOLA |
2009 | 織戸 学/片岡龍也 (ウェッズスポーツIS350) | レーシングプロジェクトバンドウ |
2010 | 星野一樹/柳田真孝 (TOMICA Z) | HASEMI MOTOR SPORT |
2011 | 谷口信輝/番場 琢 (初音ミク グッドスマイル BMW) | GSR&Studie with TeamUKYO |
2012 | 峰尾恭輔/横溝直輝 (ENDLESS TAISAN 911) | Team TAISAN ENDLESS |
2013 | 武藤英紀/中山友貴 (MUGEN CR-Z GT) | TEAM 無限 |
2014 | 谷口信輝/片岡龍也 (グッドスマイル 初音ミク Z4) | GAINER |
2015 | アンドレ・クート (GAINER TANAX GT-R) | GAINER |
2016 | 土屋武士/松井孝允 (VivaC 86 MC) | VivaC team TSUCHIYA |
次回のSUPER GT基礎講座は、
第8回「マシン以外にも注目! サプライヤーたちの戦い」をお送りします。
お楽しみに!
バックナンバーはこちらから
第1回 サーキットに行こう! ~7つの開催サーキットを紹介~
第2回 レースを観戦しよう! ~チケット購入とサーキットの歩き方~
第3回 SUPER GTマシンの基本を知ろう! ~2つのクラスと多彩な車種~
第4回 チームとドライバー ~ハイレベルなクルマのプロたち~
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI | |
12/07-08 | Round5 SUZUKA |