- SUPER GTについて
- ニュース
- レース日程
- 順位
- チーム&ドライバー紹介
- English
- Japanese
GT500とGT300のクラス違いに加えて、様々な車種のマシンが40台以上も参戦するSUPER GT。エンジンパワー(馬力)も違えば、クルマの形も違うし、タイヤも違って、その性能はバラバラなのに、いろいろなところで白熱のバトルが展開されている。それはSUPER GT独自のルール「サクセスウェイト制度」や「BoP(Balance of Performance)」が機能しているから。
今回はその「サクセスウェイト制度」について、SUPER GTの込山 勇データインスペクター(DI)との加藤 博テクニカルアドバイザー(TAD)に話を聞いた。
込山 勇 SUPER GTデータインスペクター
自動車メーカーを退職後、2017年SUPER GTデータインスペクターに就任。予選/決勝後に全車の車両データを回収・分析し、SROおよびGTAに提出するなどの役目を担う。GTAの性能調整委員会の座長を兼任。
加藤 博 SUPER GTテクニカルアドバイザー
様々なチームを経て、2024年よりSUPER GTテクニカルアドバイザーに就任。スポーティングレギュレーションの技術部分や性能調整を含めた技術全般に携わり、技術チームをサポートする。性能調整委員会のメンバーのひとり。
SUPER GTには「GT500」と「GT300」というふたつのクラスが存在し、その2クラスのマシンが混走しながら、それぞれのクラスで競い合っている。「GT」とはグランドツーリングの略で、「500」と「300」はおおよその馬力を示している。つまり、GT500クラスは約500馬力、GT300クラスは約300馬力のマシンで競い合っているのだが、GTアソシエイション(以下GTA)がまず最初に取り組んでいるのが「GT500クラスとGT300クラスの速度差」の調整だ。
GT500とGT300が混走することによって様々なバトルが展開されており、それもSUPER GTの魅力のひとつでもある。
「GT500に対してGT300が“プラス何秒程度”になるように考えて、その速度差は主にGT300に対するBoPで調整しています」(加藤TAD)
これはスピードの違うGT500とGT300の車両を安全に混走させるためのもので、GT500とGT300の理想のタイム差について正解はない。コースレイアウトの特性などによっても違ってくるうえ、GT500/GT300ともにどんどん速くなってきているため、今までと極端にズレないようにしている。SUPER GTの魅力のひとつでもあり、レースを面白くしている要素である“2クラス混走”は、このようにして生み出されている。
今年はGT500が3車種15台、GT300は13車種28台と様々な車種のマシンがSUPER GTに参戦している。そこでGTAでは、同じクルマが連続して好成績を残すことが難しくなるように「サクセスウェイト制度」を導入、さらにGT300に参加する特性の違う13車種の性能を均衡化するためにレースごとに「BoP」を採用している。
その「サクセスウェイト制度」と「BoP」、それぞれの導入理由について、込山DIと加藤TADに聞いた。
「同じクルマが毎回勝ったら、レースとしてはつまらないですよね? ファンの方たちにとっても、自分の応援するクルマが勝ったらうれしいでしょうし、レースも面白くなります。それが『サクセスウェイト制度』を導入した目的のひとつです」(込山DI)
「多種多様なクルマが出て、接戦で走っているから、ファンのみなさんが面白いと思って観に来てくれるわけで、それを成立させるために、性能の違うクルマが同じ土俵で勝負できるようにするのが『BoP』です。」(加藤TAD)
公式車検および決勝レース後に行なわれる車検で「サクセスウェイト」や「BoP」で規制された項目が検査される。
「TOYOTA GR Supra」「Nissan Z NISMO」「Honda CIVIC TYPE-R」の3車種で競っているGT500は、規定によってモノコックやECU、クラッチ、ダンパー、ブレーキのほか細かいパーツに至るまで数多くの「共通部品」を使うことが定められている。エンジンも同じ規定で各社が製作開発した2ℓ直列4気筒直噴ターボを使用しているため、GT500車両に対してはBoPは適用されず、成績に応じて「サクセスウェイト制度」と呼ばれるウェイトハンディが課される。
この「サクセスウェイト」はGT500/GT300クラスともに共通で100kg、課されるウェイトは<表1>のとおり。ただし、ウェイトの数値上の累計は行なわれるが、実際に車両に搭載するウェイトは50㎏が上限。それを超えた場合、GT500クラスには「燃料流量リストリクター」を併用したサクセスウェイトが課され<表2>、エンジンに流れ込む燃料の量を規制して“強制的に”出力(パワー)が抑制される。一方のGT300クラスには、今季から給油流量のリストリクター“径”の調整「サクセス給油リストリクター」を併用したサクセスウェイトが課される。燃料給油にかかる時間を増やすことでピットストップ時間を“強制的に”長くする(サクセス給油リストリクター径はレースごとに公示)。これらのハンディによって同じ車両が上位に入賞し続けることが難しくなる。
サクセスウェイトの搭載量はGTAが配布する“ステッカー”で表示される。サイドウインドウ後方をチェック!
GT500で使用される燃料流量リストリクター。これによってエンジンに流れ込む燃料の量を調整し、エンジンパワーを制限している。
GT500/GT300|サクセスウェイト制
参戦6戦目まで | 参戦7戦目 | 参戦8戦目 | サクセスウェイト上限 |
---|---|---|---|
ポイント×2㎏ | ポイント×1㎏ | なし | 100㎏ |
・1㎏以下の端数が生じる場合は切り上げ。
GT500/サクセスウェイトと燃料流量リストリクター
サクセスウェイト | 0-50㎏ | 51-67㎏ | 68-84㎏ | 85-100㎏ |
---|---|---|---|---|
車載ウェイト | 0-50㎏ | 34-50㎏ | 34-50㎏ | 35-50㎏ |
燃料流量リストリクター | 95.0㎏/h | 92.6㎏/h | 90.2㎏/h | 88.0㎏/h |
≫ 第2戦 富士:エントリーリスト GT500クラス(表右SW欄がサクセスウエイト)
≫ 第2戦 富士:エントリーリスト GT300クラス(表右SW欄がサクセスウエイト)
次回の後編では「GT300で採用されている『BoP』について」ご紹介します。