マシン以外にも注目! 〜サプライヤーたちの戦い〜
2017年も熱戦が続くAUTOBACS SUPER GTシリーズ。いよいよ夏休みに突入し、「サーキットに観戦に行こう!」と観戦計画を練っている方もいらっしゃると思います。そこでSUPER GTの基礎中の基礎を改めてご紹介します。
第8回のテーマは「マシン以外にも注目! 〜サプライヤーたちの戦い〜」です。
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SUPER GTのイメージシンボルといえば、やはりそれはレーシングカー、GTマシンですよね。シリーズが終わりチャンピオンのドライバーとチームが讃えられるように、タイトルを獲ったマシンも高く評価されます。
しかし現代のレース、特にSUPER GTではマシン単体の性能だけでは、チャンピオンはおろか、勝利すらま容易ではありません。
そこで大事になるのが、タイヤやオイルなど自動車に欠かせない部品類であり、それを供給するメーカー、いわゆるサプライヤーです。
その代表的なパーツとしてタイヤが挙げられます。タイヤはマシンと路面を繋ぐ唯一の接点で、GTマシンに限らず自動車にとって非常に重要なパーツです。このタイヤの性能がレース結果にも、多分に影響を及ぼすため、現在ではタイヤを1メーカー(種類)に限定するワンメイク制を採用するシリーズやレースが多く見られます。F1世界選手権も現在はワンメイクです。
しかし、SUPER GTではGT500とGT300両クラス合わせて4つのタイヤメーカー(ブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュラン)が、各チームにタイヤを供給しています。そしてマシンのメーカー同様に、このタイヤメーカー間でもシビアな開発競争が繰り広げられています。
レース雑誌や様々なメディアの記事でも「このチームのタイヤは暑さ、路面温度が上がっても強い」とか「あのメーカーのタイヤがちょい濡れの滑りやすい路面にフィットした」などの表現が載ることがあります。またシーズン前などにチーム関係者が「クルマ本体の力だけでなく、タイヤメーカーの協力も得て、クルマの総合力を上げていきます」とコメントすることもあります。このように成績の行方を左右するほどタイヤの役割を担っているのです。
タイヤメーカーにおいてもレース用タイヤの開発は、エンジニアの頭脳バトル、開発力の競争の場となっています。自動車メーカーがレーシングカーの開発を、エンジニアの“成長”や“教育”の場とするように、タイヤメーカーにとっても競争があるSUPER GTは、貴重な経験の場となっているのです。
様々なパーツで構成されるGTマシンのサプライヤーはタイヤメーカー以外にも数多く存在します。例えば、エンジンオイルやブレーキオイルなどの潤滑油製品を供給するメーカーも、重要なサプライヤーです。
エンジンオイルは、エンジンを開発するメーカーから推奨オイルが明示されます。しかし、少しでも良いオイル、それも自分たち専用にカスタマイズされたものがあればなお良いかもしれません。そこで、オイルメーカーが特別に開発したレース専用オイルを供給してもらうチーム、ガレージも少なくありません。
同様の物にはブレーキパッドもあります。ブレーキング性能を左右するパッドは走行性能に関わる重要なパーツだけに、各チームがこだわる部分です。なお、GT500車両ではディスクやパッドはカーボン製で、その他も含めてブレーキ関連部品は共通部品となっています。
ホイールはタイヤ交換のあるSUPER GTではデザイン性に加えて、メカニックが掴みやすい、ブレーキの状況が確認しやすいなど細かな進化、工夫により、チームの戦闘力向上に貢献しています。
SUPER GTのGT500車両では、高騰する開発・製造コストを抑えるため、性能を均一化する部分では全車種共通のパーツを導入しています。それはモノコック、リアウイング、アンダーパネル、リアディフューザー、電子部品(ECU等)などです。
モノコックはDTMと共通仕様のものを、東レ・カーボンマジックが製造し、3メーカーに高品質で同等なものを供給しています。同社は最先端素材製造企業で”日本のモノづくり”を支えています。
また、LC500とGT-RのクラッチにはZF社の製品が共通部品として使用されています。ZF社の製品は、各メーカーの高性能エンジンに対して充分な性能を保持し、エンジンメーカーの信頼を得る品質で、GT500車両の性能に貢献しています。これは競争ではありませんが、共通部品のサプライヤーによる、プライドを懸けた技術の挑戦でもあります。
そして、クルマの性能には直接関わりませんが、メカニックたちが使う工具にも注目するとおもしろいかもしれません。プロ野球やJリーグの選手がバットやスパイクにこだわるように、メカニックたちも自分たちの手足であり、武器となる工具にはこだわりがあります。ピット内の工具箱の中には、国内外の工具ブランドのスパナや特殊工具が整然と収められています。憧れのチームのメカニックと同じスパナを使う、そんな贅沢をしてみるのも良いかもしれませんね。
マシン整備の効率化は、限られた時間を有効に使えることになります。ましてやレース中にピットインのあるSUPER GTにおいては、それが勝負に直結することも。そこで、チームでは、マシンを持ち上げるジャッキなどの特殊用具をメカニックが自作してしまうこともあります。これはサプライヤーとは関係ありませんが、同じマシンを使うチームでも、ピット内の工具が違ったりするのでチェックしてみるのも面白いですよ。
次回のSUPER GT基礎講座は、
第9回「SUPER GTの基本的な競技ルール ~スポーティング・レギュレーション~」をお送りします。
お楽しみに!
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6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
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