SUPER GTの基本的な競技ルール 〜スポーティングレギュレーション〜
2017年も熱戦が続くAUTOBACS SUPER GTシリーズ。いよいよ夏休みに突入し、「サーキットに観戦に行こう!」と観戦計画を練っている方もいらっしゃると思います。そこでSUPER GTの基礎中の基礎を改めてご紹介します。
第9回のテーマは「SUPER GTの基本的な競技ルール 〜スポーティングレギュレーション〜」です。
◇ ◇ ◇
自動車レースの基本中の基本は“一番速く走った者が優勝”と極めて単純なものですが、その中で公正な競技を行うために「レギュレーション(規則)」が定められています。
自動車競技にはレースのカテゴリーごとに、使用するクルマ(マシン)の仕組みを定めるテクニカル・レギュレーション(車両規則)と、競技の内容や運営を定めたスポーティングレギュレーション(競技規則)の2つがあり、この2つのレギュレーションに則って競技が行われます。
SUPER GTの場合、FIA国際モータースポーツ競技規則とその付則、及び開催国ASN(日本の場合はJAF)国内競技規則とその付則、そして「2017 SUPER GT Sporting Regulations(SpR)」に従い開催されます。この講座の第4回や第5回でも解説しましたが、GTアソシエイション(GTA)がSUPER GTの競技運営に関して厳格に定めたのがSpRです。本規則、及びその付随する項目の詳細を定めた「付則」には、タイヤや燃料の運用方法、予選方法やスタート手順、ピット作業、ゴール判定、ペナルティなど競技に直接関わるルール、ウェイトハンディ制やシリーズのポイント制といったシリーズ運営に関わるもの、さらには競技結果に対する抗議の手続き方法まで細かく定められています。さらに、SpRの改訂や各大会ごとの運用に関しては「ブルテン」が発行されます。
規則をすべて紹介していくと大変な量になってしまいますので、ここではレースの進行において、ポイントとなるルールをご紹介します。
通常の決勝レース距離(250-300km)の場合、1台のマシンを2人のドライバーが交代で乗ります。予選も決勝も2人が必ず走らなければなりません。また、決勝レースでは1人が全体の3分の2を超える距離を走ってはいけません。
決勝レース距離が長い第2戦富士と第6戦鈴鹿は、第3ドライバーの登録も認められます。第3ドライバーが認められているレースでは、予選・決勝で1人が走らなくても構いません。
1回のレース(公式練習〜決勝スタートまで)で、タイヤは最大6セット、24本が使用できます。このタイヤは印が付けられ(マーキング)、予選Q1では1セットが使用できます。Q1で予選を終えた場合はQ1で使用したタイヤを決勝スタートで使います。Q2でも1セット使用できます。Q2を走行した車両はQ1またはQ2で使ったタイヤの抽選が行われ、決勝スタートで使用するセットが決められます。
ウエット(雨用)タイヤは、オフィシャルから「ウエット宣言」が出された場合のみ使用できます。この宣言が出た場合に使用するウエットタイヤは、上記のセット数に含まれません。
レース距離が300kmを超える場合は、使用できるタイヤの総セット数がGTAからブルテンで公示されます。
予選はQ1とQ2によるノックアウト(2段階の勝ち抜き)方式で、クラス別に行います。
Q1は両クラスとも15分間の走行を行い、タイム順位の上位がQ2に進出できます。GT500クラスは上位8台、GT300クラスは上位14台です。それ以下のマシンはQ1の順位で決勝レースのスターティングリッドが決まります。
Q2は両クラスとも12分間で行われ、それぞれの上位のスターティングリッドが決まります。Q2でノータイムだったマシンは、Q2進出車両の中で最後尾となります。
予選のタイムが同じだった場合は、先にタイムを出した方が上位となります。
決勝レースは、2列縦隊で整列し、走りながらスタートするローリングスタート方式で行われます。
スターティングリッドは、GT500マシンを前に、その後ろにGT300車両が予選結果順に並びます。その先頭にオフィシャルカー(先導車両)がついて、フォーメーションラップを行います。その際、各車は隊列を保ち、GT300の先頭車両は安全の為、GT500最後尾との間隔を空けることになっています。フォーメーションラップは原則1周ですが、天候が悪い場合などは数周に及ぶ場合もあります。
オフィシャルカーがコースから離れて、シグナルがグリーンになったらレースがスタートします。ただし、スタートラインを超えるまでは前走車を追い抜いてはいけません。
決勝レース中には、ピットにおいてドライバー交代を必ず行わなければなりません。
決勝レースが250-300kmの場合は最低でも1回、距離が長い場合は事前に最低のピットイン回数が定められます。
ピットインにおいて、同時に作業ができる人数は、最大5名のメカニックとドライバーのみです。このうち2名でタイヤ交換を行います。燃料給油とタイヤ交換は同時に行うことはできません。
また、タイヤ交換は義務ではありません。作戦によって、無交換や2本交換などを選択することもできます。
SUPER GTのレースは各大会で決勝レース距離が決められており、その距離に応じた周回を走ることになります。
先頭のマシンが、決められた周回を終えてフィニッシュラインを通過するときにチェッカーフラッグが出され、それがレース終了の合図となります。その後方のマシンは周回数の多い順、同一周回の場合はフィニッシュラインを通過した順に、順位が決定されます。順位はクラス別になります。
走行した周回数が、そのクラスの優勝車両の70%に達しなかったマシンには、順位が認定されません。
SUPER GTは1年間のシリーズ戦を通じて獲得したポイントで、GT500クラスとGT300クラスそれぞれで、ドライバーとチームの2つのタイトルを争います。
2017年は全8戦を行い、全戦のポイントの最高得点者にタイトルが与えられます。
○ドライバー・ポイント
決勝順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ポイント | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
ポイント (レース距離 700km以上) | 25 | 18 | 13 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
※予選ポールポジション : 1pt
|
○チーム・ポイント
決勝順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ポイント | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
ポイント (レース距離 700km以上) | 25 | 18 | 13 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
決勝レースの走行ラップ数によるポイント ※チームのみ | |||
トップと同一周回 | 1周遅れ | 2周遅れ以上で完走 | |
---|---|---|---|
GT500クラス ポイント | 3 | 2 | 1 |
GT300クラス ポイント | 3 | 3 | 1 |
SUPER GTでは、各車両のドライバーの成績に応じたウェイトハンディが搭載されます。ドライバーが乗り変わって、2人のポイントが違う場合は多い方を採用してウェイトハンディの重量を決めます。
○参戦2戦目から6戦目では、獲得したドライバーズ・ポイント、1ポイントを2kgに換算した重量のウェイトハンディを積載します。
(例:10ポイント=10×2=20kg)
○参戦7戦目では、獲得したドライバーズ・ポイント、1ポイントを1kgに換算した重量のウェイトハンディを積載します。
(例:10ポイント=10×1=10kg)
○参戦8戦目はウェイトハンディが適用されません(ノーウェイトとなる)。
○ウェイトは100kgまで搭載されます。計算上では100kg以上も累積されます。
○欠場等によりドライバー2人のポイントが違う場合は多い方を採用、参戦数は車両の参戦回数が採用されます。
○GT500ではウェイトが51kgを超えた場合、超えた重量を3段階で区切って燃料流量リストリクターをより絞ることで置き換えます。
GT500クラスの燃料流量リストリクター制限 | ||||
---|---|---|---|---|
課されたウェイトハンディ | 0~50kg | 51~67kg | 68~84kg | 85~100kg |
搭載するウェイト | 0~50kg | 34~50kg | 34~50kg | 35~50kg |
燃料流量リストリクター | 95.0kg/h | 92.4kg/h | 89.8kg/h | 87.4kg/h |
※燃料流量リストリクター数値は1時間あたりの使用燃料の重量。 ※通常は95.0kg/hで、0~50kgのウェイトハンディは燃料流量リストリクターの制限はありません。 |
競技を中心に細かく決められているスポーティングレギュレーションですが、こんなことも定められています。
◎排気音量 (SpR 22)
GTマシンは爆音を響かせて走っているように思われますが、ちゃんと排気音量の制限があります。
排気管から3m離れて110デシベル、0.5mで125デシベルが最大限度となっています。
◎使用燃料 (SpR 28)
SUPER GTで使用する燃料は市販されている無鉛ガソリンを使用することになっています。
市販車にも使用される「無鉛ハイオク」で、サーキット内のガソリンスタンドで指定された銘柄を購入します。
使用する際は空気以外のものを混ぜてはいけません。海外戦では別途定められます。
◎決勝レース後の記者会見 (SpR 41)
優勝ドライバーは「表彰台における式が終了後、速やかに記者会見の会場に移動し、会見に出席しなければならない」という決まりも定められています。
次回のSUPER GT基礎講座は、
第10回(最終回)「SUPER GT最長のレース“鈴鹿1000km”を楽しむ」をお送りします。
お楽しみに!
バックナンバーはこちらから
第1回 サーキットに行こう! ~7つの開催サーキットを紹介~
第2回 レースを観戦しよう! ~チケット購入とサーキットの歩き方~
第3回 SUPER GTマシンの基本を知ろう! ~2つのクラスと多彩な車種~
第4回 チームとドライバー ~ハイレベルなクルマのプロたち~
第5回 公正で安全なレースをするために ~SUPER GT独自の取り組み~
第6回 レース以外にもあるサーキットのお楽しみ ~SUPER GTの進化するファンサービス~
第7回 SUPER GT その24年間の歴史 ~時代に即したレースを提供~
第8回 マシン以外にも注目! 〜サプライヤーたちの戦い〜
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI | |
12/07-08 | Round5 SUZUKA |